大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)1984号 判決

被告人 松本仙六

〔抄 録〕

論旨第一点。

原審第二回公判調書の記載(記録第十一丁裏)によれば、検察官が、起訴状記載の公訴事実中「電話線約三貫七百匁位」と訂正した旨の申立をしたこと、並びに裁判官においてこれに対し許可の決定をしたこと、及び右公判調書にこれが決定に当り、予かじめ、その許可の申立につき被告人又はその弁護人の意見を徴した旨の記載のないことは洵に所論のとおりである。

然し乍ら、元来刑事手続における裁判官は、その審判の対象として、刑罰権の確定を求むる起訴状記載のいわゆる公訴事実の範囲を逸脱することはできないのであつて、如何なる事実につき刑罰権の確定を求むるかは、全く検察官の自由に決定し得るところである。されば、公訴事実の同一性を害せず而も被告人の防禦に何等の不利益をも来すことのない起訴状の訂正の如きは、如何なる事実につき刑罰権の確定を求むるものであるかを特に鮮明する意味において、検察官は自由にこれを為し得べく、刑事訴訟法もまたこれが訂正の申立に対し、被告人又は弁護人の意見を徴す如きことを要求していないところである。ましてや、冒頭示すところによつても明らかなように、訂正の定にも添わないような検察官による起訴状訂正の申立に対し、原審がその許可の決定を為すに当り、予かじめ被告人又は弁護人の意見を徴するところがなかつたからといつて、違法の手続であるということもできないし、また、弁護権を不当に制限したことにもならない。従つて、右意見を徴せずして許可の決定をしたことを違法な手続であるとし、また、弁護権の不当な制限であるとして、これが前提の下に原判決を非難する所論は当らない。

而してまた、裁判の告知は、公判廷においては、宣告によつてこれをすることができるのであるから、前示公判調書の記載によつて明らかなように、右許可の決定は、被告人及び弁護人の在廷する公判廷において宣告されたことが窺い得られる本件において、その告知のなかつたことを前提として原判決を非難する所論もまた採用するに由がない。論旨は、すべてその理由がない。

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